よみがえったシルクロードの音色

正倉院の渡来楽器を復元 11

「木畫紫檀琵琶」

絲の音色


 正倉院の南倉に、天平の時代を迎えた日本へ伝えられた四弦の優美な姿の琵琶楽器が収蔵されている。
 この楽器は、遥かペルシャ地方で発生し、シルクロードを通って漢時代の中国に伝えられたという。唐代に入ると琵琶は宮廷音楽や寺院の供養音楽ばかりでなく、市井の芸能音楽にまで広く浸透して弦楽器の主流をなしてきた。
 木畫紫檀琵琶はちょうどこの頃の作と思われ、保存も良く復元する上にも様々な情報を提供するものであった。
 この琵琶は工芸的にも素晴らしく、象牙をふんだんに用いるとともに、木畫の技法を使っている。槽(背面)の中央に蓮の花が描かれ、その回りを花鳥文様が左右対称にほどこされている
 前面の捍撥(撥があたる所)には保護のため、朱塗られた革が貼ってあり、それには騎馬に跨り、山野に虎を追う狩猟人が描かれている。弓を引き、二匹の虎に、いままさに矢をいかけんとしている図は、壮観で異国情緒あふれるものである。
 また車座になって宴が行われているところも描かれ、楽器を手にしている人物が持つのは、本体と同様の四弦琵琶である。装飾は別として、唐から伝わった四弦琵琶はその形状を変化させることなく現在に至っている。

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