よみがえったシルクロードの音色

正倉院の渡来楽器を復元 12

「箜篌」(くご)

絲の音色


 正倉院に存在する箜篌ほど思いを巡らされる楽器はない。
 保存されている二種類の箜篌も完全な形を止めるものはなく、残闕と言われる部分を残すのみである。
 箜篌と呼ばれるこの古代のハープを中国で復元すると、その姿はちょうどヨットの帆柱に帆を張った状態に見える。
 もちろん帆に見えるところには二三本の弦が張られていて、弦を支える本体の半弓になっているところは共鳴板にもなっている。
 箜篌の起源は、古代アッシリア地方とされ、当時を偲ばせるレリーフに箜篌に良く似たハープを演奏しているものが現存している。それがシルクロードを通って、中国に伝えられたことが敦煌莫高窟の奏楽図の中に見受けられ、その関連性が裏付けられている。
 しかし、正倉院の箜篌がいつどのようにして日本に伝えられたかは謎で、朝鮮半島経由説と中国直行説に分かれていたが、現在では中国直接伝来説が有力になっている。
 音楽家として、復元された箜篌の音色を聴くと、絹の弦を用いてつま弾くために自然で優しい中音域と、澄んだ高音域を持つが、低音域の響は重厚感が少ないように思われる。
 往時の箜篌の用いられ方も、敦煌の奏楽図にもあるように、優雅な音楽のソロや古音楽の合奏に使用されただろうと音色からも推測される。


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