よみがえったシルクロードの音色

正倉院の渡来楽器を復元 13

「彫石横笛」
 石の音色


 正倉院の北倉に、鼠色の蝋石をくり抜いて作られた『彫石横笛』という長さ三七・一センチの横笛が一本保存されている。
 古来より、笛は竹や木など植物性の素材で作られるのが一般的で、周代に定められた八音でも石で作られる楽器といえば体鳴楽器の『磬石』に代表されるものしかない。なぜ気鳴楽器の笛を石で作ったのかと疑問が湧いてくる。
 中国では玉といわれる石への信仰がある。石には霊力があると信じられ、邪気を祓うとされている。また笛の音にも邪気を祓う霊力があると民間伝承されている。このことから相互の力を増幅させた神事の笛として作られたのかも知れない。
 その姿は、一節の竹管に模倣してあり、全面に山並と雲を背景として描き、その空間に草花が配され、鳥や蝶が舞う姿が浅く彫られ、節の所に五センチほどの竹の枝を三本を束ねた装飾がほどこされている。
 また、吹き口や七つある指孔の回りにも花弁の彫刻がなされていて、美術品としても一級品なのが分かる。
 横笛の伝来は、漢の武帝の西域開発の後にインドから伝わったとされ、指孔が七つのある横笛の型は、唐代に俗楽用に作られ、その時代に日本に伝わり、唐楽に使用され現在の龍笛や篠笛に受け継がれている。

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