よみがえったシルクロードの音色

正倉院の渡来楽器を復元 17

「螺鈿紫檀琵琶」
 糸の音色


 正倉院の北倉に保存されている長さ一・三メートルの四弦で槽が紫檀で作られた琵琶がある。この琵琶は聖武天皇の妻、光明皇后愛用の琵琶と伝えられていている。
 槽には玳瑁で唐草模様が施されており、そこに貝殻で雲、鳥、蓮が螺鈿されている。また槽の中央左右に二羽の人の顔をもった摩訶不思議な鳥が螺鈿されている。これは「迦陵頻伽」といってヒマラヤや極楽浄土に住むといわれる想像上の鳥で、その鳴き声は美しく妙なる音とされていて、仏の声のようだといい伝えられている。
 雅楽にも奈良時代に伝来したという、二人から四人の子供が法会で鳥の翼と天冠をつけて舞う「伽陵頻」という童舞があり、この琵琶とともに伝来したことを想像させるに不思議でない。
「近世になると迦陵頻伽という言葉は美声の芸妓や花魁をさす隠喩として使われ、井原西鶴の『諸艶大鑑』にも迦陵頻伽を思わせる人面鳥身の鳥が夢の中に出てくる下りがある。」(参考岩波仏教辞典)この復元された螺鈿紫檀琵琶の音色はというと上質で妙なる響きがした。


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